モキュメンタリー

黒澤司(YAOYOROS、世界ヒッチハイク部、武蔵野航空警備隊)

「Have a good time!」

突然思い立って転職をして、引っ越しもして、騒がしい毎日を過ごしていた。

そんな中、1カ月、アメリカへ。

仕事としてだけど、少し観光も出来た。

大好きな天文台はいくつか行けたし、気に入った田舎街には数日滞在して生活をした。

田舎町に住むミュージシャンの渋い演奏と、それを自分らしく楽しむ老若男女に強く感銘を受けたりもした。

何千キロとドライブをした車の中で、色々な音楽をじっくりと聴けたのも良かった。

壮大な景色と溶け合って、ああ、なんて美しいのだろう...と何度も思った。

 

些細なことだが、アメリカで一番感動した事は、お店から出る時などに必ず「Have a good day!」とか、「Have a good time!」とかシンプルに、言われた側が嬉しくなるような言葉を掛けてくれることだ。

これはお決まりの言葉で、日本の「ありがとうございました!」と一緒で、そう教育を受けているのだろう。

それを分かっていても、朝食を買ったコンビニで、この言葉をかけられると、自然と、今日も頑張ろう、と思えたのである。

僕にとって、一日をコーディネートしてくれるような魔法の言葉だった。

 

しかし、もちろん良いことばかりではなかった。

アメリカの洗礼もたくさん受けた。

レジを打ち間違えたことを指摘した際の見事な舌打ちは僕の貧弱な心を打ち抜き、レンタカー会社でめんどくさそうな態度をされ理不尽な文句を言われた際の行き場のない怒りは、僕を無の境地へと至らしめた。

極め付けは、車上荒らし(レンタカーの窓をバリバリに割られた)をされた際、

警察署にて、被害届などの手続きが終わり、憔悴しきっている僕に向かい、ルイ・C・K似のポリスメンが言った。

 

「Have a good time!」

 

 

言葉とは時に残酷なものである。

 

 

アメリカに1ヶ月滞在したんだから、少しは荒々しい男になっただろう、と思っていた。

しかし、今日電車の中で、隣に座った男が小指で鼻くそをほじくって取れたブツを椅子に塗りつけたのを見て、うわ...きちゃない...と思ってしまった自分自信を客観視して、荒々しい男への道はまだ遠いな...と思い直したのであった。

 

明日は吉祥寺でライブ。

少し荒々しくなった僕を観に来てください。