モキュメンタリー

黒澤司(YAOYOROS、世界ヒッチハイク部、武蔵野航空警備隊)

2018年7月6日(金) 雨のち曇り

引っ越しの物件探しで1日のほとんどを費やしている。労働後  引っ越しを考えている街に物件を見に行った。

家に帰ってもまだ悩んでいたが  何気なく颱風の詩集を開くと  いきなりその街が出てきて  ああ  そういうことか  と思った。

詩集を閉じると  さっきまで強く屋根を叩いていた雨が止んでいて  外は静まり返っていた。

子供の頃  この時期になると  雨水で近所の田んぼの水路があふれ  行き場を失った大量のザリガニやタニシ  フナなどが隅にできた水溜りに流れついてごにょごにょしていて  それを捕まえに行っていた。気持ち悪いくらいたくさんいたけど 全部まとめてすくい上げて捕まえた。ザリガニがフナを食べたり ハサミでつつき合ったりして  あいつらはすぐに死んだけど  また捕まえにいった。

ずぶ濡れでも気持ちよかったな。小学生だった。

2018年6月22日(金)晴れ

夜 阿佐ヶ谷へ。 阿佐ヶ谷駅前の定食屋に入り バラエティ番組をみながら ぼけっと 豚丼食った。わりと満たされた夕食だった。

ラピュタ阿佐ヶ谷でレイトショー 新東宝ピンク映画「変態家族 兄貴の嫁さん」を観る。 映画館につくと 数人のおじさん達が上映を心待ちにして座っていた。 定員48人と小さな映画館だから 窮屈になるのを予想しながら行ったけど いい感じに人がまばらで 散らばって観れたので 最初から最後まで楽しめた。80年代前半 ぱんぱんに膨れ上がった時代 繁栄と闇 そして色気のある時代なんだよな と思った。 おれたちにはない 時代の色気とは いったい何なのだろうか。 

2018年6月4日(月)晴れ

夕方、とあるワークショップへ。

途中、映画を撮っているYくんに遭遇して、少し話した。Yくんは疲れてると言っていたが、相変わらずいきのいい眼差しをしていて安心した。

ワークショップは、そこまで持っていかれる内容ではなく、途中から、今日の夕飯は何を食べようかな、などと考えていた。

30分の道のりを歩いて帰る。長く住んだこの街からの引っ越しを考えているので、見慣れた街並みをじっくり見ながら歩いた。懐旧の情に浸っている自分もいて、ああ、おれの魂は肉体は、この街に根付いてるんだな、と思って、そろそろ引っ剥がして、新しい旅へと出る準備を、と。

アパートに帰り、インターネットで適当にお笑い番組を流し見してみたが、心からは笑えず、消して静かにしていた。

時代が進むに連れて、笑う機会は確実に増えていると思う。一般人でさえも、人を笑わせることがうまい人が増え、そういう人がまず人気がある。けれど、僕はつられて笑いながら、ふと寂しくなることがある。ギラっとした、床に水をはね返すような笑いとは違った、もっともっと底が深い、いつまでも心が明るくなるような、何回思い出してもまた笑えるような笑いが減って来てるような気がする。一人で自然とにっこりしてしまうような笑い、そういった瞬間を探したいな、と思った。

2018年5月29日(火)晴れ時々くもり

1週間なにも書いていない。けど、毎日がありました。

朝、いかがわしい夢をみていたが猫に起こされる。志ん朝の落語を聴きながら洗濯。にやにやと笑いながら洗濯物を干していたから、誰かに見られていたら気持ち悪い男に見えたと思う。

労働行って、帰り道、紫の紫陽花が咲いていた。しばらく立ち止まって観察。 ぱんぱんに膨れあがった花びらは、ぷっくりしていて、違う生き物のようであった。 

アパートに着いて、鶏肉と野菜をぽぽぽんと炒めて食って、本読んだり、レコード聴いたりしながらイマジネーションを高めていく。冷蔵庫の ジー という音が気になるくらい とても静かな夜。

ゴガツビョウなんてうまいこと言ったセンパイたち。負けないようにね。チャオ!

2018年5月22日(火) 晴れ

昨日は大人数で酒を飲んだが、全員とちゃんとした話は出来なかった。発起人は自分だから申し訳ないなと思う。やっぱり酒は少人数がいいな、と思ったが、ただ性に合わないだけだろうか。でも、キラリと光る瞬間はあった。

労働後、駅前をチャリで走っていると、数名の男が警察に取り押さえられていた。酔って喧嘩でもしたようで、怒号が飛び交っている。周囲の人々は目を合わせないようにしていた。そんな騒動を物ともせず、建物の暗がりに隠れて男女がくねくねしていた。

風邪を拗らせ声がおかしいので、アパートに帰ってネギと餅焼いて胃に流し込む。明日には少し良くなるだろう。

2018年5月17日(木) 晴れ

夜中、なかなか睡魔がやってこないので、新しいノーブルノートを下ろして、iPhoneなどに溜めておいた言葉などを書き写す。「TIME IS LIFE」という歌ができた。

労働後、アパートに着いて、部屋の扉を開くと、昼間の熱が部屋にこもっていて、入った瞬間、モワッとした。窓を開けて、ギターを抱えて、ベッドにごろりと寝っころがって、夜中にできた「TIME IS LIFE」を小さな声で歌ってみる。うん、かなり良い。夜中の天使のいたずらで、良い悪いが分からなくなる時があるからだ。少し時間をあけて歌ってみて、身体にじんわりと馴染んでいたら、その感覚は間違いないものだったと判断している。19日の弾き語りライブで歌おう。

高畑勲監督のお別れ会の、宮崎駿監督の挨拶を文章で読んだ。恥ずかしげもなく号泣してしまった。文章で号泣したのは初めてかもしれない。55年来の友人のお別れ会で、初めて出会った時のことを昨日の出来事のように話していた。誠実で、とても美しいと感じ、込み上げるものがありました。遺影の無邪気な笑顔が良かった。自分にもそんな友人はいるかな、と少しだけ考えたけど、すぐにやめて、布団にもぐった。

2018年5月16日(水) 晴れ

昨日は飲み過ぎてしまったが、昼前には起床。

5.19にオオヤヨシツグさんの個展で歌わせていただくので色々と整理。当日、オオヤヨシツグさんとリョーカンさんとコラボレーションするので、その歌を考えたり、録音したりしていた。

暇なので図書館に行くと、花壇には躑躅がびっしりと咲いていた。しばらく眺めてから館内に入る。人はまばらでがらんとしていた。

本棚から串田孫一の詩集を引っこ抜いて、読む。この人の文章はやっぱり好きだなぁ、と思いながら読む。昭和に書かれたこの本の、街の風景や日常が、平成30年に生きる青年にもしっかりと刺さっていることを考えると心が膨らんだ。

花の本をじっくりと読んでいるおじいさんがいたので少し観察していると、目が合ってしまい、にっこりと微笑んでくれた。花のような笑顔だった。

チャリで街をゆっくり流しながら帰る。

途中、セブンイレブンに立ち寄ってアイスを買い、 風を舐めながらアイスに吹かれていると、西の空はもうすっかり夏で、ゆっくりと溶けていく空と、紫色のコントラストがとても美しかった。

カラスは夜に紛れてどっかに飛んでいった。

1週間前の気温に比べると、うんと暑くなった。このまま夏に突入して 一気に駆け抜けていくのだろう。

夜、また少しギターと遊び、豚肉とネギをちゃちゃっと炒めて食った。